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【坐禅作法113】磁石の山

ちょっとはマシな坐禅作法 磁石の山〜養心門4〜

Presented by

〜養心門4〜


ミッドライフ・クライシス

一度体験してみればわかる。 パラドックスは必殺だ。

ゲシュタルト転回
図・布施仁悟(著作権フリー)


33歳や42歳の大厄を迎えてゲシュタルト転回の起こるとき、そこで思い知らされるパラドックスの前にそれまで被(かぶ)ってきた偽りの仮面(ペルソナ)は死を迎える。 それはほとんどショック死に近い。

「ラザロよ、出で来たれ!」

新約聖書のラザロのように、ペルソナの死からの復活を体験するとき、人は新たな人生が目前に拓(ひら)けてくるのを見ることだろう。

ただし、このゲシュタルト転回を透過できるのはそれまで真っ直ぐに人生を生きてきた求道者に限られる。 人生の各段階で学ぶべき運命の試練のカリキュラムは厳密に定められているため、もしも中途半端な生きざまのせいで、その単位を落としていたら、学びきれなかった運命の課題が負い目となって残り、その後の人生にからみついてくる。 それが気球をつなぎとめておく碇(いかり)のように浮上するのを妨げるのだ。

さらにそうした負い目をゲシュタルト転回以降の時節に持ち越した場合、40-50代のどこかで、何もかもが渾沌(こんとん)と化してしまうことだろう。 あたかもミサイル砲撃を受けた後の市街地のように。

<< その場かぎりの言い逃れにすぎなかったのに、それよりマシなことを思いつけなかった… >>

誰もが10-20代を通じて、そんな負い目をいくつも抱え込んできている。 そうした負い目が解決されずに残っていると、心のどこかで後ろめたさを感じながら生きることになり、心のこりの記憶の過去と不安の入り混じった希望の未来のあいだで身動きがとれなくなってしまう。 あげくに人生最大の岐路に立たされたとき、つまらない選択をして間違った道を歩んでしまうことにもなるのだ。

人生最大の岐路は四十五歳にやってくる。 ミッドライフ・クライシスとしても知られている四十五歳の彷徨(ほうこう)は、氷河の中で眠っていたナウマン象が目を覚ますようなものだろうか。 人々の中で眠りこけていた何かがいきなり覚醒して身震(みぶる)いするのである。 ある者は、若気の一本気のような無謀な起業をはじめ、また別のある者は、いきなり髪を染めて、それまでの小心翼翼(しょうしんよくよく)とした態度をひるがえし、家庭をかえりみることなく若い異性とのアバンチュールを夢見るようになる。

ひたすら平穏無事な道をそのまま歩めば、満ち足りた楽隠居の境涯が待っているはずの中年の裏枯れどきに、なにゆえ人生というキャンバスの上に激しい個性を叩きつけようとするのか。 ふみにじられた愛情生活の腹いせか、それとも傷ついた自尊心のうずきなのか。 その行動は深海魚の生態のように不可解で、ほとほと思案にあまる。

赤雲水

四十五歳のいろいろ

黒雲水

こんな四十五歳がいた。

18-21歳まで歌を歌っていて、『サルビアの花』という知る人ぞ知る名曲を生み出しておきながら、「おじいさんになろう」と決意して25歳から本屋の店主になり、やがて45歳になったときに再び歌を歌い始めたという人物がいる。 早川義夫さんだ。 <<歌いたいから歌うのではない。歌いたいことがあるから歌うのだ。自分を歌うのだ>>…早川さんのそんな気持ちが『いつか』という曲になったとき、45歳の再出発となるアルバムの制作が決まった。

誰もが心の中で歌を歌ってる
本当のものをつかむため
沈黙の中で血が騒ぐ

空いっぱいに夢を描き
ボクはじいっと待っていた
あふれてくるのを まっすぐな声で歌うことを
生きてゆく悲しみ 生きてゆく喜び

いつだってひとりなんだ
涙を落とせ 終わってはいないさ
もっと叫べ もっと歌え

(早川義夫『いつか』より)

またこんな四十五歳もいた。

それまで勤めていた会社を辞めて45歳で主夫となり、インターネットで精神世界のブログを始めた人物がいた。 「45歳は人生の転機だ。みんな、いまが辞めどきだよ」というのが彼の主たるメッセージだった。 妻のパートの稼ぎと退職金で育ちざかりの子供を育て、どうやら本人は精神世界の夢物語にすがって気持ちをつなぎとめていたらしい。 彼が50歳になった頃、妻がウツ病になってパートを休みがちになり、家庭内の均衡が崩れはじめた。 ほどなくして「私はもう終わるのだ」という末後の一句を残してそのブログは閉鎖された。

45歳で会社を辞めたことが彼の心の弾力性を奪っていったことは想像するにたやすい。 20-30代に比べて気力も体力も衰える中年になってから彼を襲ったアイデンティティ・クライシスは勝手ちがいの青天の霹靂(せいてんのへきれき)だったのだろう。

矢印マーク たましいの場所


早川義夫のエッセイ集
なんかエロくて、なんかいい
こういうの好きなんだな


ミッドライフ・クライシスの考察

こうした四十五歳の生態について、田口ランディさんの『人生二十九歳変動説』には、「それまで全く興味のなかったものに狂ったように魅かれたりする」という40歳代特有の現象が報告されている。

田口ランディの『人生二十九歳変動説』〜四十歳代の迷い〜


この四十歳代の迷いというのは、身体の変調という形で表出したり、もしくは女性(あるいは男性)に恋をしてしまう……というような形で現れたり、それまで全く興味のなかったものに狂ったように魅かれたりするのだが、とにかく心と身体が動揺し、その経験によって、本当に自分が望んでいる生き方とはどんなものかを再確認し、それが完了すると五十歳から「奉仕」というものを仕事の中心に据えて生き始めるようなのである。

田口ランディ『馬鹿な男ほど愛おしい』P.150-151「人生二九歳変動説」


ひょっとするとこれは、25歳で本屋の店主におさまってご隠居気分だった早川義夫が、45歳になってから唐突に「空いっぱいに夢を描きボクはじいっと待っていた」と歌い出したように、45歳になると自分の生まれてきた目的を突然思い出し、それをなんとか果たそうとするのではないだろうか。

この点について、20世紀最高の心随観の教科書― M・ベイン『解脱の真理』シリーズ ―には、著者のM・ベインが大師からこんな風に告げられる場面がある。

呼ばれるものは多いが招かれるものは少ない


何ひとつ偶然に起こるものはないのだよ。 呼ばれるものは多いが招かれるものは少ないものでね。 君は君自身の生まれてきた目的に従ってこれまでやってきたのだ。 しかしその通りにする人はめったにいない。 俗世間に呑み込まれてしまうのだ。

M・マクドナルド・ベイン『解脱の真理』-P.322「第11章 隠者様の説く解脱の真理(一)・霊体移動」


45歳を迎える以前の段階で、すでに俗世間に呑み込まれてしまっていたにもかかわらず、それでも自分の生まれてきた目的を果たそうとする行き場のない本能。 それが四十五歳におけるミッドライフ・クライシスの原因なのかもしれない。

そういえばシンガーソングライターの斉藤和義が45歳で放ったヒット曲があった。

地球儀を回して世界100周旅行
キミがはしゃいでいる まぶしい瞳で
光のうしろ側 忍び寄る影法師
なつかしの昨日は いま雨の中に

やさしくなりたい やさしくなりたい
自分ばかりじゃ 虚しさばかりじゃ

サイコロ転がして1の目が出たけれど
双六の文字には「ふりだしに戻る」
キミはきっと言うだろう「あなたらしいわね」と
「ひとつ進めたのならよかったじゃないの!」

強くなりたい 強くなりたい
我慢ばかりじゃ 誤魔化しばかりじゃ

愛なき時代に生まれたわけじゃない
キミに会いたい キミに会いたい
愛なき時代に生まれたわけじゃない
強くなりたい やさしくなりたい

(斉藤和義『やさしくなりたい』より)

この『やさしくなりたい』には準備不足のままミッドライフ・クライシスを迎えた45歳の男の心情がよく表現されているとおもう。

「愛なき時代に生まれたわけじゃない」「キミに会いたい キミに会いたい」というサビの悲痛な歌詞が印象的で、どうやらツインレイの再会のミッションの成否も45歳になったときにわかるものらしい。 45歳まで生きてきて「ふりだしに戻る」というのは、できれば避けたいものだ。

矢印マーク 『馬鹿な男ほど愛おしい』

「人生二九歳変動説」だけでも値千金のコラム集

青雲水

電脳山養心寺公案集 養心門 第六則 磁石の山

緑雲水

こうした憂き目に遭わないためには40歳までの人生を真っ直ぐに生きなければならないことを教える物語がアラビアンナイトにある。

以下の『磁石の山』の物語には四十日間というキーワードが出てくるのだけれど、アラビアンナイトでいう四十日間というのは四十歳までの歳月の隠喩(メタファー)となっている。 そのように置き換えて読んでみると、この物語は40-54歳までの人生を描いていることが浮かび上がってくるだろう。

電脳山養心寺公案集 養心門 第六則 磁石の山


 数多くの島々からなる領国の王子がいた。 その名をアジーブという。 国王の死後、領国を継いだアジーブは、領内の島々の先にある遠海を見てみたいと思い立ち、十艘ほどの帆船を用意して出港した。

 四十日のあいだはつつがなく海原を進んだものの、四十一日目に船隊は激しい嵐に遭ってしまった。 乗組員たちが今にも沈みそうな船の上でこらえていると、夜明け近くに暴風もおさまり、その後は何ごともなかったかのようなさわやかな日の光がさしてきた。

 アジーブたちは手近な島に上陸して、二日ばかり養生したあと航海を続けることにしたが、船長は「あの暴風のせいで思ってもみない場所に流され、国に戻る航路がいまのところわかりません」と言った。

 それから十日目のこと。 メインマストに登っていた水夫が船首の方向に大きな黒い物体を発見した。 その報告を聞いた船長は、みるみる顔面蒼白となって倒れ伏し、こう言うのだった。

 「ああ、王さま!われわれはもう誰一人として助かる見込みはない…」

 その愁嘆ぶりに驚いて気づかうアジーブに向かって、船長は恐怖に打ち震えながら説明をはじめた。

 「あの大きな黒い物体は強力な磁石でできている磁石の山です。 いまや十艘の船隊のすべてがその強力な磁力の圏内に入ってしまい、この瞬間にもあの山に向かって吸い寄せられているのです。 もはやわれわれの帆船はどんな風が吹こうがその磁力に逆らうことはできません。 明日にもなれば船体の金具という金具がはずれ、あの山に飛ぶように張りついていき、船はばらばらになって海のもくずとなってしまうでしょう」

 その後、船長は「ああ、あの嵐さえなければ…、あの嵐さえなければ…」と呟くほかは何も手につかなくなってしまった。

 かくして翌朝になると、金具という金具が宙を飛んで磁石の山にはりついてゆき、船はすさまじい音をあげながら解体して海中に沈んでいった。 乗組員たちは一人のこらず溺れ死んだ。

ガラン版アラビアンナイト第五十三夜『王の息子である第三の遊行僧の話』


10-20代を通じて抱え込んできた負い目を40歳以降に持ち越してはならない。 30代から起こる2度のゲシュタルト転回を通じて、そうした負い目にオトシマエをつけるのだ。

(2017.3)

矢印マーク 『解脱の真理 改訂版―ヒマラヤ大師の教え』


つまり心随観の入門書がコレなのである。
霞ヶ関書房の本はAmazonで絶版扱いになっていても
大型書店で注文すれば取り寄せてもらえるはず。
いざとなれば出版社に直接注文するといい。
送料はかかるけどマーケットプレイスでカモられるより、
ずっといい。
参考までに…定価:5250円TEL:03(3951)3407

矢印マーク 『キリストのヨーガ―解脱の真理 完結編』


解脱の真理の続編。前作の内容をさらに掘り下げている。
心随観のより実践的な内容でありがたい一冊。
続編なのに出版社が違うのはどういわけだ?
参考までに…定価:3360円TEL:03(3439)0705


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