【坐禅作法54】器具を使った簡易望景内
ちょっとはマシな坐禅作法 器具を使った簡易望景内〜結跏趺坐へのストレッチ 7〜
〜結跏趺坐へのストレッチ 7〜
琉球空手の基本-三戦(サンチン)型
これが噂の琉球空手の基本・三戦(サンチン)の型である。
琉球空手の基本-三戦(サンチン) 〜手順1〜
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1.まずは“両腕受け”の姿勢へ。
2.足は踵を押し広げるようにして内八の字。
3.集約拳で拳を握り、両腕を胸前で開いて“両腕受け”。
4.両肘を体幅より外側に出ないように絞り込む。
5.右足は気持ち前。このとき後ろ足となる左足の爪先と前足となる右足の踵は横一直線となる。
6.気が骨盤を抜けて脚部に流れるようにすると骨盤はしっかり立ち、上体が左右前後に傾かなくなる。
その姿勢を崩さぬよう膝を適度に屈して上体を垂直に落とす。
7.図は“右前サンチン立ち”。
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琉球空手の基本-三戦(サンチン) 〜手順2〜
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1.息を吸いながら(吸気)、拳甲を下にして左腕を引く。
2.脇をこするように左肘を引き寄せ、脇はしっかり締めて呼吸停止(止息)。
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琉球空手の基本-三戦(サンチン) 〜手順3〜
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1.息を吐きながら(呼気)拳甲が上になるように左腕を突き出す。
2.腕が伸びきると同時に息を吐ききる。
3.息を吸いながら“両腕受け”の姿勢に戻り、同じ動作を左右逆にして行う。
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図:布施仁悟(著作権フリー) 宇城憲治『武術空手の極意・型』P.70-71
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このサンチン型は呼吸のタイミングを明らかにしている唯一の型。
他の空手の型は“隠し呼吸”といって呼吸を明らかにはしていないけれど、
それでもやはり型と呼吸の一致をみないとイケナイものだそうである。
これは心道流空手師範・宇城憲治氏による呼吸と型の関係の解説。
呼吸は吐きながら身体の各部位をひとつにし、動きにひっかかりがないようにし、
腹部の上下の圧搾と、鳩尾のゆるみによって動作の極めをつくります。
そのことによって呼吸と身体の一致が生じ、瞬発力、極めが生まれてきます。
(宇城憲治『武術空手の極意・型』P.212)
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この宇城師範の言葉の意味するところはすでに説明済みである。
「吐きながら身体の各部位をひとつにし、動きにひっかかりがないようにし…」
呼吸を調え筋肉に余計な付加をかけない気道の流れに沿った自然な動きをし、
「腹部の上下の圧搾と…」
腹部の内臓周辺の気道に気を流す“骨盤おこし”と、
「鳩尾のゆるみによって…」
身体前面の任脈を円滑に気が流れる状態を作り出すことによって、
空手の奥義に達するというわけだ。
ここまで最も重要な“呼吸”について触れずにきたのだけれど、それは
菩薩軸をなんとかしない限りは呼吸法の入口にも立てないからである。
呼吸法は武禅の奥義。不随意筋を抱えている修行段階ではまだ早いのだ。
ただし、武道と坐禅はその揆を一にしていることは、ここに明白だろう。
武道教育を銘打っておきながら禅学をなおざりにするなら、それもまた尻抜け。
武禅は一如。両者は双修されることを待っている。
ゆえに武道教育にも禅学を導入することをボクは乞う。
たしかに凡人社会にありがちな無知ゆえの障壁はあるかもしれないけれど…
国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
(『日本国憲法』第二十条第三項)
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国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他の宗教的活動をしてはならない。
(『教育基本法』第九条第二項)
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これら「政教分離規定のため禅学教育はできない」とする言い訳は通用しない。
まったく同じ道理を指向しているのに武道ならよくて禅学はイケナイとは、
一体どういう見識によるのか。そこまでオツムがどうかしちゃってるのかい?
結論!日本の武道教育には相撲と空手と坐禅がふさわしい。これで完璧。
だからその実現のためにもチョコザイな役人どもを島流しにしちゃうのだっ!
さてさて、そんな冗談もここまで。次の型は絶対に無理をしてはいけない。
テッポウの応用型と同様に関節や筋肉に無理な負荷のかかりやすい型だからだ。
『武術空手の極意・型』
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武道の型稽古の重要性を知るならこの本に限る。
宇城師範の強さの秘密を知ることは
武道の奥義へ至る道を知ることなのである。
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簡易望景内8
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簡易望景内8…本型
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1.両脚を開き、両腕を後ろ手に回し、右手で左手の親指を握る。
2.腰を反り、胸を開いて、顎(あご)をあげ、
骨盤と肩の傾きを調整して菩薩軸の入口を確認できたら、
息を吐きながら(呼気)上体を前方にかがめる。
3.頭を下げ、両腕を垂直に立てんばかりにグイグイ傾けて、
気の済むまで呼吸停止(止息)。
4.骨盤の歪みを解消できると股関節の硬直が解放され、
それと同時に肩の歪みも修正されてゆく。その感覚を掴もう。
5.骨盤が正しい位置に収まらないと本当の意味で両腕を垂直には立てられない。
歪んだ骨盤のままだと肩関節や筋肉を傷める原因になるから無理はしないように。
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図:布施仁悟(著作権フリー) 参考:高木一行『鉄人を創る肥田式強健術』P.167
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これもまた肥田式強健術の型のひとつ。
非常に効果の高い型である一方でちょっと危険な型でもあるとボクは思う。
その理由を説明する前に呼吸について少し補足しておきたい。
伝統的な坐禅作法に従っている禅者なら鼻呼吸は無意識的習慣のはずである。
それは左右の鼻の奥にある重要な気道“イダとピンガラ”に刺激を与えるもので、
ゆえにヨーガ・ストレッチ・武道の型稽古のいずれも鼻呼吸が基本となる。
さらに不随意筋を意念で動かして気道に刺激を与えられるようになれば、
必然的に呼吸停止(止息)の効果を知ることになるだろう。
不随意筋に影響を与えようと思ったら息を止めて集中しなければならないからだ。
したがって型のポーズをキープして気道に気を流す瞬間は止息が基本となる。
逆に三戦(サンチン)型にあるように武道の打撃の瞬間というのは決まって呼気。
すなわち吸気でリズムをつくり、止息で気を流し、息を吐きながら打つわけだ。
どちらにしろ身体が歪んでいるうちは呼吸法の入口にも立っていないのだから、
鼻呼吸と止息さえ意識していれば十分だと思うし、ボク自身もそうしている。
時節の到来まではサンチン型で呼吸法の奥義を探ってみるつもりだ。
それでは「簡易望景内八…本型」のちょっと危険な理由を説明しよう。
まずはボクの体験から骨盤と肩の関係についての解説を試みたい。
〜布施仁悟の軸ずれ〜
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図は左右の不動軸。
骨盤が右斜め後方にひどく傾いていたから、
肩を通る不動軸はほとんど水平だった。
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図:布施仁悟(著作権フリー)
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ボクはひどい猫背で骨盤が右斜め後方に傾いていた。
そんなボクの肩を通る不動軸の体感はほとんど水平に近い感覚で、
それをなんとかして垂直方向に起こさなければならなかったのだけれど、
筋トレの延長線上で行っていた闇雲なストレッチではどうにもできなかった。
無理に筋肉を伸ばした挙句に脇腹や太腿の筋膜を断裂してしまったこともある。
そんなある日、左斜め前方に骨盤を傾ける動作をすると具合がいいと気づいた。
骨盤が右斜め後方に傾いていることを知ったのはその時である。
その体験以降からボクのストレッチは理に合(かな)ったものに変わっていった。
猫背の背が丸くなる度合いは骨盤の傾きに正確に比例しているらしく、
骨盤が後傾すればするほど肩は前傾する仕組みとなっている。
当然、右斜め後方の骨盤の歪みも肩の歪み方と密接につながっていた。
したがって骨盤が右斜め後方に傾いていたボクの場合は、
肩の傾きも同様なので右肩を左斜め前方に押し上げると同時に、
左肩は右斜め後方に押し下げるように操体すればよい。
それも肩と骨盤を同時に動かすようにすると、なおさらよい。
しかも骨盤の傾きは膝関節や足首の歪みにも影響を与えていた。
たとえば脚や足の筋が攣(つ)るのは、その関節部分の歪みによって
気の流れが堰き止められるからで、骨盤を調整すれば解消できることも知った。
とはいえ骨盤と肩を左前方に向かって立てればよいと理論的に知ったところで、
実践となると話は別。不随意筋に阻まれて容易に立てられるものではなかった。
ただし坐禅もたけなわとなる60分から90分過ぎともなれば
硬いながらも骨盤は立つとわかっていたから坐禅だけは欠かさず続けた。
坐禅60分を過ぎるころから“骨盤おこし”をできるようになってくるのだ。
〜中心軸と菩薩軸〜
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○黄色い軸は体軸(中心軸)。
頭部の中心点から流れる気をここに通す。
喉の青い部分は喉の蓮華の接合点。
ここをつなぐと“骨盤おこし”が可能になる。
○綿棒みたいな赤色の軸は菩薩軸。
中心軸を調えるにつれて明確になってくる。
任脈はこの2本の軸の中間にあるようだ。
たしかに督脈の延長線上にあるようで、
目鼻の奥からずっと足先まで続いている。
ただし当初は身体の中にめり込んでたため、
ほとんど体感できなかった。
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図:布施仁悟(著作権フリー)
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これはまったく不可思議な現象でどんなに雑念だらけの60分だろうとかまわない。
60分経過するのを坐って待っているだけでその瞬間は必ずやってくる。
しかもキッカリ60分経過の時点で推し量ったようにやってくる。
あまりに単純でアホらしくなってくるけれど、それが“坐禅の原理”というものなのだ。
“骨盤おこし”の効果をとりわけ実感できるのは90分過ぎ。
そんな60分以上の坐禅を朝晩続けるだけで日々刻々と気道が育つ。
ウソだと思うなら坐ってみればいい。坐禅は真偽を確認する手段なのだから。
それで、その“骨盤おこし”である。
坐禅開始後60分〜90分を経過する頃になると不随意筋が弛んでくるので、
その瞬間を見計らって、止息で、意念で、気合いで、とにかく何でもいいから、
身体のど真ん中を通る体軸に気を流して“骨盤おこし”をするといい。
つまり仁王・不動軸や菩薩軸からではなく身体の中心からおこしてゆくイメージだ。
それも自分の骨盤のクセに合わせてグイグイおこす。
すると臍下三寸。骨盤の中心の空間に臍下丹田への入口がみえてくるだろう。
すでに紹介済みの真言や真実の呼吸法は補助的な行法として役に立つはずだ。
ただし一日に開く気道はほんの数ミリ。そこは継続だけがモノを言う世界である。
さてさて、件(くだん)の「簡易望景内八…本型」であるけれども、
この型は両脚を地面でしっかり踏ん張っていることがわかると思う。
それは膝関節と骨盤を両足と腰の三点で固定して下半身を安定させたうえで、
後ろ手にまわした両腕を垂直に立てながら肩関節の傾きを調整する狙いがある。
すると菩薩軸を流れる気は股関節から内股を抜け足先まで到達するはずだ。
仁王軸の経路である脚裏のハムストリングも気持ちよくストレッチされるだろう。
ただし膝と肩関節が不随意筋で固定されたままだと話は違ってくる。
そんな身体で両腕を垂直に立てて肩関節の傾きを力わざで修正しようとしたら、
無理な方向に肩を回すことになり逆に肩関節や筋肉を痛めやすくなってしまう。
膝関節と骨盤を地面で踏ん張って固定しているため“あそび”がないからだ。
つまり、この型は膝と肩関節の可動域が大きいことを必要条件としている。
そのためには骨盤の歪みを自力である程度解消できなければならないけれど、
自分の骨盤のクセもわかっていないとしたら、それはできない相談だ。
なんだかとっても危険そうでしょう?
そこで、この型にはまだ早いという禅者のために椅子を使った操体法がある。
〜簡易望景内8…本型(for Beginner)〜
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そのまま図のごとし。
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図:布施仁悟(著作権フリー)
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図のように椅子を利用すると肥田式準拠の型よりも関節の“あそび”ができる。
腰と肩を自由に捻(ひね)ることもできるからボクはこちらをオススメしたい。
基本理念「望景内は器具を要せず」から外れるけれど椅子ぐらい勘弁しておくれ。
というわけで簡易望景内の解説はここまで。
とはいえ望景内の基本的な考え方はすべて書いたつもりである。
なので、ここからは「真向法」と「チベット体操」をベースに、
応用例としての望景内を軽く眺めてみることにしたい。
(2012.10)
『鉄人を創る肥田式強健術』
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簡易強健術は臍下丹田を正しく開発した人向けの体操。
臍下丹田を開発できるとこれだけで十分だそうである。
やっぱりホンモノはいつの時代にもいたんだね。
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体軸の支線
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図・布施仁悟(著作権フリー)
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