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【第5話】入り江のソクラテス

興禅富国論 入り江のソクラテス

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これはすなわち暴論である


私はこれから因縁をつける

観てもいない映画の批評をしようというのだから、これはすなわち暴論である。
それからこの冒頭の一文は、謙遜というより、むしろ保身の性格が強い。

こう々として自ら好(よ)しとする人に見(まみ)えば、
応(まさ)にすべからく口を防ぐべし(『菜根譚』前123)

自分は正しいと信じきっている人を前にした時は、沈黙を決め込むのが鉄則である。
確かにそうなのだ。聞く耳を持たざるものにかける言葉など見つからない。

しかしだ。そうわかっていながら、これから因縁をつけようというわけで、
私だって、だから、それなりに気おくれしながら書いてはいる。
ついでなので、この批評衝動を抑える秘訣があったら誰か教えてくれ、
と保身のための弁解を再度入れておこう。
なにしろ今日の私は、いつになく感情的なのだ。

矢印マーク 『菜根譚 (講談社学術文庫) 』

良く言えば、仏教と儒教と道教の華麗なる昇華。
それが菜根譚。意地悪を言えば、
儒教を捨て切れなかった著者の複雑な妥協点。
それも菜根譚。

赤雲水

「入り江」という名のラブレター

黒雲水

第82回米アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を獲得した作品は、
日本のイルカ漁を告発した『The Cove(入り江)』だった。
立ち入り禁止の入り江で行われるイルカ漁を、不法侵入したり、
地元民と衝突しながら盗撮したスリリングな映画らしい。

映画の中でインタビューを受けた日本の地元議員は、
「海洋汚染についての調査フィルムと聞いていた…」と困惑し、
地元漁協は「肖像権を侵害している」と配給会社に抗議文を送りつけた。

こうした手続無視のゲリラ的手法で映画を撮った監督は、
「水銀含有量の多いイルカを食用にするのは人体にとって有害である」
と大きなお世話を主張し、この映画は日本人へのラブレターだと誇らしげに語った。

折りしも、日本の調査捕鯨船が欧米の反捕鯨団体にロケット弾を打ち込まれるなど、 理不尽な被害が取り沙汰されていただけに、この映画が権威ある賞を受賞した反響は大きい。

そもそも私自身は鯨もイルカも食べる習慣はないので、
これまでは、どこかの過激な一部の団体が無茶を仕出かしている、
くらいにしか考えていなかったようにおもう。

ところが、この映画が欧米のメジャーな賞を受賞したことは、
対欧米人としてこの問題を拡大認識する契機になったし、
日本人の精神文化を真っ向から否定されたようで、
腹立たしい気持ちの湧きあがってくることに私は嘘をつけない。

この映画の米アカデミー賞受賞は、捕鯨文化がどうのという議論を通り越して、
私の日本人としてのナショナリズムをあからさまに刺激しているようなのだ。

「この映画によって日本人の反米感情が高まる可能性がありますが…」
という日本人記者のゲリラ的インタビューに、さしもの監督も
「まだ映画を観ていないくせに何を言ってるんだ」と憤慨してみせた。

精神批判を連ねたラブレターで相手を口説き落とせると信じているわりには、
自分を批判されることには慣れていないようである。


ソクラテス万歳!

そういう私も、かつては日本人としての自分を恥じていたようにおもう。

だから世界に出ても恥じることのない哲学を身につけるために、
それから人生において応用の利く知識を期待して、
大学では西洋哲学を専攻することにした。

ところが、そこで哲学入門を担当していた教授は甲高い声を発する精気のない男。
全く魅力のない人物だった。おかげですっかりやる気を失くす。

それでも何冊かの哲学書を読みきれたのは、若い年代にありがちな
難しいことをむやみにありがたがる狂気に憑(つ)かれたからにほかならない。

そんな体たらくだから、憶えていることはソクラテスの一言のみである。

私が知っていることと言えば、私は実は何も知らないということだけだ。

この言は見事に私の体たらくを補償してくれた。ソクラテス万歳!

かくして私にとっての西洋哲学は、ソクラテスに始まりソクラテスに終わる。
ただし、坐禅を始めてからこれが至言でもあることに気づいた。
彼はやたらと知識を求める私に こう教えてくれていたのだ。
学んで得られる知識など重荷になるだけだよ 、と。

矢印マーク 『ソクラテスの弁明・クリトン (岩波文庫) 』

結論。西洋哲学のごときは、
ソクラテスに始まりソクラテスに終わる。

赤雲水

人類がこの愚かさを克服する方法

黒雲水

学んで得られる知識は、心の中で優劣や善悪を決める判断基準となっていく。
そういう知識が増えれば増えるほど、誰かとの間に壁を作ってゆくことになるのだ。

たとえば、海洋生物を保護すべき理由を探すほどに、その根拠は磐石となってゆく。
その反作用として、その根拠を覆す意見や行動をとる誰かを疎ましがるようになる。
そして、その誰かを劣悪と決めつける感情がいつの間にか湧きあがり、
常識を自認してやまない人をして過激な行動へと誘う。

そういうときの人間は何にだって大義名分を立てられるものだ。

だから欧米人は、ある時は、キリスト教の優位を示すために、
またある時は、白人の優位を誇示するために大義名分を立ててきた。

これは、われわれ日本人も例外ではない。

大和民族の優位を信じるあまり神風に頼って無謀な戦争を仕掛けたり、
沈まぬ太陽ともてはやされてバブル景気に浮かれたのはどこの誰だったか?
そういう愚かさという意味で、われわれ人類はみな兄弟なのである。

そしてここに、人類がこの愚かさを克服する方法がある。
それこそが坐禅だ。

キリスト教圏の人たちに坐禅は無理だという向きもあろうけれど、
そこはかつてソクラテスを生んだ西洋である。
欧米人だって坐禅をできないはずはあるまい。
ソクラテスの思想と禅の思想は根本において同じなのだから。

それはそれとして、禅者でありながら、この映画の受賞に感情的となり、
しかもそれが私のナショナリズムから出たものであることはまことに遺憾である。

こうした屈託(くったく)を捨てることは、
坐禅を持ってしても難しいことを自ら証明してしまっているではないか。

今日はしこたま謙遜した文章を書いてみたい気分だった、としておこう。


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